〈参考資料1〉 基調講演「400年におよぶ日蘭交流〜歴史に学ぶ交流の姿〜」 立教大学 荒 野 泰 典 教 授 の レ ジ ュ メ I.はじめに (1)自 己 紹 介 ・オランダと私 ・山田町と私〜ブレケンス号事件〜 ・「近世国際関係論」の立場から (2)今日お話したいこと 1.400年をふりかえって 2.江戸時代の日蘭関係から 3.歴史に学ぶ未来の交流図 II.日蘭関係400年を振り返って (1)400年を時期区分する〜略年表から〜 1.第1期:1600〜1689年/競合の時代 2.第2期:1941〜1860年/独占の時代 3.第3期:1860〜1980年(バブル期)/疎遠な時代 4.第4期:現代〜未来/「これから」の時代 (2)第1期・競合の時代 ・リーフデ号の漂着からポルトガルとの断交まで ・日本市場(日本・中国貿易)の派遣を求めて競合する諸勢力/「倭寇的状況」 ・大航海時代/南蛮貿易/文禄慶長の役/琉球制服/キリスト教の弾圧… ・オランダ:スペインからの独立戦争/東インドでの派遣の希求 ・日本:戦国時代・「下克上」の時代から「元和堰武」へ ・日本の平和と東アジアの平和 (3)第2期・独占の時代 ・VOC:喜望峰以東の「インド」における、貿易等の特許会社=独占体 ・ヨーロッパ勢力のなかでのVOCの、シナ海域における覇権の確立/日本貿易の独占 ・日本の「鎖国」の時代?=次章で許しく検討/支配層による国際関係の独占と平和/中国・朝鮮・琉 球との比較 ・オランダ商館長の江戸参府/朝鮮通信使・琉球国王使(謝恩使・慶賀使)の来日/中国人の八朔札/アイヌのウイマムとオムシャ ・蘭学・洋楽の発達/国学の発達 ・国際情勢の変化/「鎖国」と「開国」 (4)第3期・疎遠な時代 ・植民地化の危機からの脱出/欧米列強に追いつけ・追い越せ/「脱亜入欧」 ・「お手本」の転換/オランダから米・英、あるいは、ドイツ(プロシャ)へ/疎遠な時代 ・植民地獲得競争/帝国主義戦争 ・日蘭の「不幸な再会」/あるオランダ婦人の手紙 ・「大国」主義/「軍事大国」から「経済大国」へ/高度経済成長 (5)第4期・「これから」の時代 ・「成長」の落とし穴/環境破壊/「飽食」の隣の飢餓と貧困/「近代」への反省/右肩上がり時代の終 焉/不透明な未来/…… ・相対化される国家/多国籍企業/NGO(非政府組織)/国境無き医師団/グリーンピース/…… ・越境する自治体/姉妹都市・友好都市の提携/…… ・越境する「個人」/日本に滞在する「外国人」/海外在住の日本人/国際結婚/「国際化」する犯罪/ 国際テロ/ ・不安定な「国際」社会/南北関係・民族問題/顕在化する国家ネットワークと個人ネットワークの対抗 関係/グローバリゼーションと反グローバリゼーション ・ふたたび「お手本」の転換/オランダの「冒険」(麻薬・安楽死・地球温暖化等々) III.江戸時代の日計関係—「単軌観の再検討」 (1)「鎖国」観とは〜司馬遼太郎氏の見方から〜 ・日蘭交渉は関が原の年の慶長5年(1600)にはじまり、その後、江戸日本の鎖国のあいだ、幕府は長 崎港において清国とオランダとのみ貿易をおこなってきた。 鎖国された日本社会を一個の暗箱とすれば、針で突いたような穴がいわば長崎であり、外光がかすか に射しこんでいて、それがオランダだった。 司馬遼太郎『街道をゆく35 オランダ紀行』(朝日新聞社、1991年) ・「鎖国」:国際的孤立/停滞した社会/自給自足社会/海外情報から疎外された民衆 ・「幕藩制の構造的特質の1つ」兵農分離・有高制・鎖国/民族的特質 (2)「4つの口」と「日本型華夷秩序」 〜近世の国際関係の実態〜 1.「4つの口」とは何か ・長崎:オランダ・中国/貿易都市長崎ー幕府直轄 ・対馬:朝鮮/対馬藩 ・薩摩:琉球/薩摩藩 ・松前:蝦夷地(アイヌ)/松前藩 ・国際関係の統括者としての幕府/「役」として担う都市(長崎)・大名(松前・対馬・薩摩) 2.「世界につながる」窓口としての「4つの口」 ・ひと・もの・情報の窓口としての「4つの口」〜図1から〜 ・「庶民」にとっての「4つの口」/シャンスイ金右衛門〜「抜荷」ネットワーク〜/「朝鮮人になった日本人」の話、等々 ・中国船のネットワーク/口船・中奥船・奥船(東南アジア) ・オランダ船のネットワーク〜図3・表1から〜 3.「日本型華夷秩序」とは何か〜図2から〜 ・「通信」の国: 朝鮮/朝鮮通信使 琉球/琉球謝恩使・慶賀使 ・「通商」の国 中国/八朔札 オランダ/商館長の江戸参府 ・「撫育」の人々: アイヌなど、蝦夷地を生活圏とする人々/ウイマム・オムシャなど ・「夷」によりて相対化される「華」 ブレケンス号事件から〜ヘッセリンク『オランダ人束縛から探る近世史』(山田町教育委員会、1998年)〜/アイヌの「和人」「和人文化」へのまなざし (3)漂流民送還体制の機能と限界 1.漂流民送還の実現 2.送還されない漂流民/「華夷秩序」の内と外 3.ペリー来航を招く (4)近代を準備したもの 1.「外光」(司馬遼太郎)としてのオランダ/「近代」(ヨーロッパ文明)を紹介 2.「暗箱」ではない近世日本社会がこの「光」を受容し、育てる土壌だった ・近世初期の輸入品が、中期にはほとんど国産化され、幕末開港期には輸出品となる 例/生糸・朝鮮人参・陶磁器(17世紀半ばから輸出品) ・輸出されなくても、庶民の生活を潤したもの/木綿・砂糖 ・高い識字率/移動する人々/流通する情報 3.オランダからの「光」は、複数の光のうちの1つ 4.世界と日本を媒介するオランダ/世界に日本を繋ぐオランダ (5)肯定される「現代」 1.ケンペルのみた元禄時代〜試料から〜 2.自由と平和のアンビヴァレンツ(二律背反)〜史料1・3〜 3.自らの体制への信頼・自信〜史料2〜 4.「平和」と「安全」のために手放したものが、「自由」/「…への自由」と「…からの自由」 (6)「鎖国」を問い直す〜「海禁」から「鎖国」へ〜 1.「鎖国」は「開国」と対概念 ・「開国」後「鎖国」という言葉は広まる ・「開国」はもともと国を新しく立てる意味/「開く」意味を持つようになるのは、開港(いわゆる「開国」)以後のこと/オランダ以外の欧米諸国に開港したことが、新しい時代の到来(「開国」)と意識された/閉塞感の存在 2.2つの国際体系の相克 ・西洋的国際体系/国家主義・条約・勢力均衡/内(キリスト教世界)で「平等」・「外」(非キリスト教世界)に不平等な国際社会 ・東アジア的(日本的)国際体系/華夷秩序・港禁…/内(漢字文化圏/東アジア…)に階層(不平等)を含んでいる国際社会 ・世界の近代化=前者(西洋的国際体系)が後者(東アジア的国際体系)を圧伏し、解体して、自らの体系に組みこんでいく過程/組みこまれる側は、劣位に置かれ、その表現が不平等条約/ 3.組み込まれた者のとるべき道/「西洋」にすりよる「脱亜入欧」か植民地化か ・前者=日本/近代化/帝国主義化 ・後者=中国・朝鮮等々の、大部分のアジア諸国/植民地化、あるいは半植民地化 4.いわゆる「開国」は、司馬氏が言うように(多くの近代人が考えたように)、「鎖国」から「開国」へという一本道(進歩)ではなく、「東アジアの国際体系」から「西洋的国際体系」に乗り換える、切り替えることだった/何かを捨てて・何かを得る、ということ/得たものは何か、切りすてたものは何か IV.可能性を開く〜歴史に学ぶ未来の交流の姿〜 (1)400年の日蘭関係—2つの交流のあり方を経験 1.�親密な時期:近世/東アジアと調和して生きた時代/「競合の時代」の成果+切りすてたもの 2.疎遠な時期:近代/東アジアを踏み台に、欧米列強に追いつき追い越せの時代/「近世」の成果(司馬+荒野)+切りすてたもの 3.現代は:「近代」の延長で、その結果のなかで生きている/いいところと問題点の両方を身に沁みて知りつつある/「近代」では解決不可能な問題が山積し始めていることも感じている (2)「外交」や「国際関係」の現状 1.国家、および国家間ネットワークの限界性の露呈 2.グローバリゼーションの進行と問題性の露呈/反グローバリゼーション 3.民間ネットワークの活性化と拡大/わたしたちが参加する機会の増大 (3)わたしたちの未来〜わたしたちが何を望むのか〜